射出検定1級に合格するまで【手順を紹介】

射出成形

射出検定1級に合格する方法【実技試験】

今の時代に欠かせない製品として、プラスチック製品があげられます。

そして、プラスチック製品を作るために射出成形機を使いますが技術が必要になってきます。

射出成形技能士とよび、特に1級は国家試験になり合格するには相当な知識と技術が求められます。

今回は射出検定の中でも、実技試験の合格手順について記事にしていきます。

悩んでる人
射出検定1級を受けることになった・・・。けど制限時間も短いし、何回も落ちてる先輩を見てるから自信無い。
ロボル
大丈夫。手順とポイント、この記事を暗記すれば合格の可能性はおおいに上がります。
実際の数値も参考にいれておきます。
試験スタートからの手順を一緒に見ていきましょう。

本記事の内容

  • 射出検定1級の試験スタートから終了までを実際の数値と共に指南。
  • 減点される項目を予測しポイントとしてチェック
  • 作業時間の目安を公開

 

本記事の信頼性

ロボル
筆者は1級の検定を2度受験し合格しました。まさか落ちるとは思っていない出来でしたので分析を重ねました。
1発合格者では分からない詳しい所まで分析しているので手助けになります。

 

射出検定1級【最重要項目】

射出検定1級【最重要項目】

結論から書きます。

最重要項目は成形品です。

作業ミスでの細かい減点が多くても、成形品が良ければ高確率で合格することができます。

シルバーストリークス、ボイドなどの項目がありますが、ポイントは重量です。

重量が出ていなければヒケ・寸法に大きな影響を及ぼします。

目安となる重量を出すには、いくつか乗り越える関門がありますが、記事を読みすすめてもらえれば最適重量を出すコツがわかります。

ロボル
しっかり重量を出せる=基礎知識がある。となり検定員も「こいつは理解している」と認識しますよ。

射出検定1級【タイムテーブル】

射出検定1級【タイムテーブル】

射出検定1級は作業工数の割に検定時間が短いです。

各作業を目標をもってこなすことで「まだ〇〇分だから余裕」や「もうこんな時間だからスピードを上げよう」とし、時間内に終わることのできる感覚が身につきます。

他がいくら良くても打ち切り時間までに終わらなければ、合格することはできません。

試験時のタイムテーブル

  • 0分~成形準備完了
  • 30分~条件出し
  • 45分~ポリスチレン40個成形
  • 1時間15分~ポリカ置き換え(昇温中にポリスチレン筆記問題)
  • 1時間45~ポリカ条件出し
  • 2時間~ポリカ40個成形
  • 2時間40分~パージ・ポリエチレン70%充填品成型
  • 2時間55分~金型取り外し
  • 3時間5分~ポリカ筆記問題
  • 3時間10分で終了

 

いかがでしょう?
筆者は標準時間に間に合いましたが、ほとんどの方は時間オーバーします。

目安として頭にいれておきましょう。

射出検定一級【スタート~成形準備】

射出検定一級【スタート~成型準備】

 

ロボル
ここからは実際どういう流れで作業をするのか、ポイントをいれ説明します。
順番を頭に叩き込みましょう。筆者の合格実績数値もあります。

 

スタートの合図で昇温

ここを忘れるとかなり合格がとおくなります。

忘れる方もいらっしゃるようなので、忘れないようにしましょう。

樹脂温度【ポリスチレン】

ポリスチレンの温度帯(参考値)

ノズル1 ノズル2 H4 H3 H2 H1
210℃ 215℃ 220℃ 220℃ 215℃ 210℃

温度帯でのポイントは「少し高いかな?」位の温度にしましょう。理由はポリカへの昇温時間短縮です。
また、ノズルとH1は練習時と同じ温度帯にすることをおすすめします。

金型温度【ポリスチレン】

次に温調器で金型温度を設定します。

固定側 稼働側
45℃ 35℃

固定側を少し高めに設定します。

温度差は10℃がベスト!稼働側が5℃低いと固定側に製品が取られてしまいます。

 

ダイプレートと金型温度の洗浄

洗浄と言っても布(ウエス)でふくだけです。

こんなところで時間をとられてはいけないのです。サッと終わらせましょう。

 

金型・成型機・ロケートの測定

測定する理由は金型が成形機に入るかどうか確かめる為です。

悩んでる人
・・・。入らないわけないじゃん!
ロボル
落ち着きましょう。

技能検定とは実際の現場を想定しています。現場に戻れば、測定しますよね?

試験で測定をしなければいけないのは、減点になるからと割り切りましょう。

 

測定時のポイント

  • 取付板厚みとエジェクターストロークもはかる。
  • ロケートとロケートリングはノギスを両手で持ってはかる。

 

成形機準備

 

  1. サーボモーターを入れ低圧でダイプレートを開きます。

    サーボを入れるタイミングと切るタイミングは大事です。

  2. エジェクタロッドを確認します。
  3. 型厚を入力して、型厚調整を行います。
  4. サーボモーターを切ります。

金型取り付け準備

 

  1. ホイストクレーンで成型機内に入れ、ロケートを合わせます。
  2. 金型の水平確認をします。
  3. 型締め力を入力し、型締め調整をします。検定員への声かけをしましょう。
    ※地域により型締め調整は、後で行う事があります。
  4. 成型機のサーボモーター切ります。

金型取り付け

クランプを使用して金型を固定していきます。

クランプと金型のすき間は3ミリ開けましょう。検定員がシックネスゲージで測ります。

順番があるので覚えましょう。金型取り外しは逆手順になります。

  1. 操作固定側の上
  2. 操作固定側の下※ガイドピンとの干渉注意
  3. 操作稼働側の上
  4. 操作稼働側の下
  5. 半操作固定側の上※エジェクタプレートとの干渉注意
  6. 半操作固定側の下
  7. 半操作稼働側の上
  8. 半操作稼働側の下

温調器配管

配管作業は確実に行いましょう。
注意点があります。

  • 配管は天側から行う。
  • しっかり、はめる。
  • 温調器は金型用バルブを開けてから、温調器バイパスを閉める。
  • 漏れがないか確認する。

 

金型開閉速度とストローク設定

地域によりここで型締め調整

サーボモーターを入れ設定をしていきましょう。

低圧で型を開き始め、ガイドピンが完全に抜けたら一度ストップしモニターをチェックします。
現在位置の数値を低速位置として入力しましょう。

高速位置は型開き完了位置から50ミリ引いた位置に設定します。

低速→高速→低速を意識しましょう。

型開き 15mm/s 50mm/s 15mm/s
型締め 50mm/s 50mm/s 15mm/

型締め低速位置は型開きの低速位置+50ミリとしましょう。惰性があるので設定場所では切り替わりません。

エジェクタストロークの設定

時間をかけられませんので暗記で大丈夫です。

速度 ストローク
20mm/s 40mm

取り出しにくかったらストロークを5ミリ伸ばしましょう。

ノズルタッチ確認

忘れがちな作業になります。

高圧型締めをしてノズルを前進させ確認しましょう。

 

ポリスチレンへのパージ

低速低圧から始めます。

パージについては別記事にまとめてありますので、本記事ではポイントのみを紹介します。

  • 背圧をかける。
  • 樹脂が切り替わったら高速・高回転でOK。
  • ダンゴはこぶしサイズにまとめる。

 

最初はポリエチレンがスクリュー内に入っています。
ポリスチレンに切り替わり、完璧に透明になれば置換完了です。

次から成型に入ります。

ポリスチレン成形作業【X組】

ポリスチレン成型作業【X組】

射出検定の、いよいよ成型作業に入ります。

初期条件から10個を目標に良品を成型します。

ポリスチレン成形条件

初期条件(参考値)

射出時間 冷却時間 射出速度 射出圧力 保圧 回転数 背圧 V/P切り替え デコンプ 計量
10sec 15sec 20mm/s 40mpa 0mpa 80r/min 10mpa 15mm 3mm 50mm

 

徐々に上げていきます。製品が90%充填したV/P切り替え値で、保圧をかけます。

最終条件(参考値)

射出時間 冷却時間 射出速度 射出圧力 保圧 回転数 背圧 V/P切り替え デコンプ 計量
15sec 18sec 100mm/s 90mpa 52mpa 100r/min 10mpa 10mm 3mm 60mm

製品重量は49.6g

特に保圧の45mpaからは慎重に上げていきましょう。

良品ができたら40個の成形を開始します。

 

ポリカーボネート成形【Y組】

ポリカーボネート成形【Y組】

射出検定1級の山場です。
ここがクリアできずに不合格になってしまう方が多いのでしっかり練習しましょう。

ポリカーボネートの温度帯

ポリカーボネートの温度は高めです。ビビらず設定しましょう。

樹脂温度【ポリカーボネート】

ノズル1 ノズル2 H4 H3 H2 H1
320℃ 320℃ 330℃ 320℃ 310℃ 275℃

 

温調器温度

参考値

固定側 稼働側
90℃ 80℃

 

ポリカーボネート成形条件

 

初期条件(参考値)

射出時間 冷却時間 射出速度 射出圧力 保圧 回転数 背圧 V/P切り替え デコンプ 計量
10sec 15sec 40mm/s 40mpa 0mpa 100r/min 13mpa 15mm 3mm 60mm

ポリスチレンでの成形である程度計量値が分かっているので、計量は60mmから始めて問題ないです。

注意されたら、直すだけです。減点対象にはなりません。

最終条件(参考値)

射出時間 冷却時間 射出速度 射出圧力 保圧 回転数 背圧 V/P切り替え デコンプ 計量
18sec 20sec 100mm/s 100mpa 70mpa 100r/min 13mpa 10mm 3mm 60mm

製品重量は57g

ポリカーボネートの成形ではウエルドラインがほぼ見えません。しかし速度をポリスチレンより下げないようにしましょう。

ポリカーボネートの成形はノズル後退機能を使って成形します。6秒程入れると良いです。

また、ポリカーボネートの成形を始める前に、もう一度型締め力調整を行いましょう。

金型温度が上昇し、低圧金型保護が起きます。

固定側製品張り付き対処方

ポリカーボネートの成形で起こりうるトラブルです。

決して自分一人で対処せず、検定員に申し出ましょう。

検定員が対処してくれます。

受験者側の対応は、成形条件を変更する事です。

主な対処方

  • 温調器温度を下げる。
  • 保圧を下げる。
  • 冷却時間をのばす。

冷却時間を伸ばすのは時間に余裕が出ている時は有効です。

40個の成形が終了したらポリエチレンの成形になります。

ポリエチレン成形

ポリエチレンの成形は2個です。

もう時間に余裕がないかと思いますが、焦りは禁物です。

まず温調器の温度を下げます。

固定側 稼働側
30℃ 30℃

樹脂温度はそのままで成形します。

成形条件は暗記しましょう。

射出時間 冷却時間 射出速度 射出圧力 保圧 回転数 背圧 V/P切り替え デコンプ 計量
10sec 20sec 80mm/s 40mpa 0mpa 80r/min 5mpa 15mm 3mm 60mm

保圧は必ず0に設定しましょう。オーバーパックします。

2個提出したら、急いで後段取りしましょう。

 

後段取り

後段取り

 

ポリエチレンの成形が終了してからの順序で説明します。

  1. ノズルを後退させます。
  2. 低圧にて金型を閉じます。
  3. スクリューの中に樹脂が残っていたら全て出し切ります。
  4. サーボモーターを切ります。
  5. 温調器のバイパスを開け、金型回路を閉めます。
  6. 固定側→稼働側→バイパス回路の順で水口を外します。
  7. ホイストクレーンで金型を仮吊りします。
  8. クランプを付けた時とは逆手順で外します。
  9. サーボモーターを入れ低圧でダイプレートを開きます。
  10. 金型を指定場所に置いたら、低圧でダイプレートを閉じ、サーボモーター切ります。

ダイプレートを開くときは検定員に声かけしましょう。

計測・筆記問題

計測・筆記問題

射出検定1級は筆記問題があります。

サービス問題なのでしっかり公式を覚えましょう。

計測

短辺と長辺を計測します。

注意点は製品を置いて両手でノギスを持ち計測する事です。

収縮率計算

収縮率=(金型寸法-成形品寸法)÷金型寸法

歩留まり計算

歩留まり=製品総重量÷材料投入重量

 

片づけ、清掃

検定員に感謝の意をこめて、使用した工具類をもとの場所に戻しましょう。

周りの掃除もします。検定員がチェックしています。

 

射出検定1級【まとめ】

計測・筆記問題

お疲れ様です。きっと時間はギリギリになると思います。

しかし決してあきらめず最後までやり切りましょう。

最後にポイントをまとめます。

  • ノギスは両手で持って測定しましょう。
  • 材料投入の際も、サービスを切りましょう。
  • 材料ホッパーのふたを忘れずに閉めましょう。
  • 樹脂置き換え作業は低速低圧から始めましょう。
  • ノズルタッチの確認を忘れずにしましょう。
  • 金型取り付けの際は低圧で金型を閉めましょう。
  • スプルー糸引きは必ず除去しましょう。
  • けがの無いよう作業しましょう。

 

最終的には製品の評価が大きいです。

目標重量の条件をいかに早く出せるかがカギとなります。

何回も練習し、体に覚え込ませるとすんなり条件が出せるようになりますので、頑張りましょう。

 

 

 

 

 

 

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ロボル

産業用ロボットSIerとして働いております。記事ではSEO、ロボットプログラミング、射出成形を主に執筆します。

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